ブルペンデーの「ブルペン」は、試合中に救援投手が準備する場所を指します。つまり、ブルペンデーは文字どおり「救援投手を中心に試合を戦う日」という意味です。
通常の試合では、先発投手が5~7回程度を担当し、その後に中継ぎ投手やセットアッパー、抑え投手へとバトンを渡します。一方、ブルペンデーでは、最初から複数のリリーフ投手を使う計画を立て、短いイニングをつないでいきます。
重要なのは、単に先発投手が早く降板した試合とは違うことです。先発投手が打ち込まれたり、故障したりして予定外に交代するケースは、通常の継投です。ブルペンデーは、試合前から複数投手の登板順や役割を想定している計画的な戦術を指します。
ブルペンデーの基本的な進行例9イニングを複数投手でつなぐイメージ

1回~2回:最初のリリーフ投手
立ち上がりを任される投手。相手の上位打線との相性も考慮する。
3回~4回:中継ぎ投手
次の投手に交代し、打順や左右の相性に合わせて対戦する。
5回~6回:中継ぎ・ロングリリーフ
複数イニングを任せられる投手などを投入する。
7回~8回:セットアッパー
勝負どころで失点を防ぐため、実績のある救援投手を起用する。
9回:クローザー
リードを守り、試合を締めくくる。
※あくまで一例。実際の投手交代は試合展開や投手の調子、球数によって変わります。
このように、通常なら先発投手が担当する序盤から中盤までを救援投手で分担します。チームによっては1人の投手に2~3イニングを任せることもあれば、1イニング未満で交代させることもあります。
また、ブルペンデーには公式に定められた投手人数や投球回数の基準はありません。9イニングを何人で消化するかは、チームの投手事情や対戦相手によって決まります。
【採用理由】なぜブルペンデーを採用するのか?3つの戦術的背景
ブルペンデーを採用する理由は、単純に先発投手が不足しているからだけではありません。投手の能力を効率的に使い、相手打線に有利な状況を与えないという戦略的な意味があります。
1. 先発投手が3巡目の打者と対戦するリスクを減らす大きな理由の一つが、MLBで重視される「打者3巡目の壁(Third Time Through the Order Penalty)」です。
先発投手は、同じ打者と何度も対戦するうちに、球種や配球の傾向を読まれやすくなります。また、試合後半になるほど疲労によって球速や制球力が落ちる可能性もあります。
MLB公式のデータによると、2016~2025年の10年間における先発投手の成績は、打順との対戦回数が増えるにつれて悪化しています。
MLB先発投手の対戦回数別成績(2016~2025年)
出典:MLB公式「Third Time Through the Order Penalty」。打率・出塁率・長打率を組み合わせたOPSも3巡目に上昇している。
このデータから分かるのは、先発投手が長く投げることが必ずしも有利ではないという点です。
ブルペンデーでは、投手を早めに交代させることで、打者が同じ投手の球筋や配球に慣れる前に別の投手と対戦させられます。打者側にとっては、打席ごとに異なる球速、変化球、投球フォームへの対応が必要になります。
2. 先発ローテーションの不足や故障に対応するシーズンを通して先発投手5人前後を安定して回すことは、簡単ではありません。
故障者が出たり、先発投手の調子が落ちたり、連戦で登板間隔を調整する必要が生じたりすると、通常の先発ローテーションだけでは対応できなくなります。
そこで、先発投手の代わりに救援投手を複数投入し、1試合を乗り切る方法が選択肢になります。
特に、先発投手の故障やコンディション不良が重なった場合には、特定の投手に無理をさせず、チーム全体でイニングを分担できる点が大きな利点です。
3. 相手打線との相性を最大限に生かす右打者が多い打順には左投手、左打者が並ぶ場面には右投手というように、対戦相手との相性を考慮した継投ができます。
例えば、相手の中軸に左の強打者が集中している場合、その打者を抑える能力に優れた左投手をピンポイントで起用する方法があります。
従来の先発投手中心の戦術では、試合序盤から終盤まで同じ投手がさまざまなタイプの打者と対戦する必要があります。しかしブルペンデーなら、投手の特徴を細かく使い分けられます。
つまり、ブルペンデーの採用理由は、投手の不足を補う消極的な対策だけではなく、相手打線に合わせて有利な対戦を作る積極的な戦術にもあるのです。
【徹底比較】ブルペンデーとオープナーの違いは?混同しやすい3つの起用法
ブルペンデーと混同されやすいのが「オープナー」です。どちらも救援投手を試合の早い段階から起用するため、同じ戦術だと思われることがあります。
しかし、両者には大きな違いがあります。それは、最初の投手が降板した後に、誰が試合の中盤を担当するかという点です。
ブルペンデー・オープナー・ショートスターターの比較MLB公式の用語解説によると、オープナーとは、通常はリリーフ投手が試合の最初に登板し、相手の上位打線と対戦した後、本来の先発投手に交代する方式です。2番手の投手が試合の大部分を担当することが基本です。
オープナーは最初の1~2イニングを重視するオープナーの最大の狙いは、試合開始直後に相手の強力な上位打線を抑えることです。
例えば、通常の先発投手が右投手で、相手の上位打線に右投手を得意とする左打者が並んでいる場合、最初に左投手を起用する方法が考えられます。
オープナーが1~2イニングを担当した後、本来の先発投手が登板して4~6イニング程度を投げる形が代表例です。
この戦術で知られるようになったのが、2018年のタンパベイ・レイズです。救援投手のセルジオ・ロモを先発起用するなど、従来の先発ローテーションとは異なる投手運用を実践しました。
ブルペンデーは2番手以降も救援投手が中心一方、ブルペンデーでは、最初の投手が降板した後もリリーフ投手を次々と投入します。
MLB公式の解説でも、ブルペンゲームは複数の救援投手を順番に使い、1人あたり数アウトずつ担当させる方式として、オープナーとは区別されています。
ただし、実際の野球報道ではオープナーとブルペンデーを広い意味でまとめて扱うこともあります。特に日本では、救援投手が最初に登板する試合全般をオープナーと表現するケースもあり、用語が必ずしも統一されているわけではありません。
見分ける際には、最初の投手の名前や役割だけで判断せず、2番手以降に誰が何イニングを投げる予定なのかを確認するのが確実です。
【メリット・デメリット】ブルペンデーは本当に有利な戦術なのか?
ブルペンデーは、投手を細かく使い分けられる合理的な戦術です。しかし、救援投手を多く必要とするため、チームの投手層や翌日以降の日程によっては大きなリスクもあります。
ブルペンデーのメリット
打者に投手の球筋を覚えられにくい
投手交代を繰り返すことで、打者が同じ投手に何度も対応する機会を減らせます。
投手ごとの得意分野を活用できる
左右の相性、変化球、球速などを踏まえて、打者に合わせた継投ができます。
先発投手の不足に対応できる
故障やローテーションの都合で先発投手を用意できない試合にも対応できます。
短期決戦で戦力を集中できる
ポストシーズンなど、試合ごとに勝利を優先したい状況で、救援陣の能力を集中的に投入できます。
救援投手の消耗が激しい
複数の投手を使うため、翌日以降の登板可能な投手が減る可能性があります。
投手交代の判断が難しい
予定より早く失点した場合、準備していた継投計画を変更する必要があります。
投手同士の連携が必要
捕手や守備陣も含め、頻繁に投手が変わる状況に対応しなければなりません。
ブルペンの層が薄いと逆効果
救援投手の能力に差があると、交代を重ねるほど失点リスクが高くなる可能性があります。
ブルペンデーで見落とされがちなのが、試合が終わった後の問題です。
仮に1試合で7人の救援投手を起用した場合、翌日の試合で同じ投手陣をそのまま使えるとは限りません。登板回数だけでなく、投球数や肩を作るための準備、連投による疲労なども考慮する必要があります。
そのため、ブルペンデーを成功させるには、当日の勝利だけでなく、翌日以降の先発ローテーションと救援投手の配置まで考えた計画が欠かせません。
短期決戦なら休養日を利用して救援投手を集中投入できますが、長いペナントレースでは、翌日以降に負担を残さない運用が求められます。
【2026年最新】MLBと日本プロ野球におけるブルペンデーの実態
ブルペンデーはMLBで広く知られるようになった戦術ですが、日本プロ野球でも導入や応用が進んできました。両リーグでは、日程や投手の役割分担などの違いによって、運用方法に特徴があります。
MLBでは投手運用の選択肢として定着MLBでは、2018年のタンパベイ・レイズによるオープナー導入が、従来の先発投手中心の考え方を変えるきっかけの一つになりました。
その後、救援投手を複数人使うブルペンゲームも広がり、先発投手の故障やローテーションの問題だけでなく、対戦相手との相性やポストシーズンの戦略としても使われるようになっています。
2026年の具体例として注目されたのが、9月29日にMLB公式サイトが報じたシカゴ・ホワイトソックスのワイルドカードシリーズ第1戦に向けた投手起用計画です。
ホワイトソックスはヒューストン・アストロズとの第1戦でブルペンデーを採用する方針を示し、新人のヘイゲン・スミスを最初の投手として起用する計画を発表しました。
ウィル・ベナブル監督は、選手のコンディションや登板可能な投手との組み合わせを見ながら、最終的な起用を決める考えを説明しています。
また、記事では、オープナーの後に3~4イニングを担当する投手を置く従来型の構成よりも、短い登板を複数人でつなぐ純粋なブルペンゲームに近い運用を想定していたことが紹介されています。
この事例は、2026年のMLBでもブルペンデーが実戦的な選択肢として活用されていることを示しています。
日本プロ野球でもブルペンデーは採用されている日本プロ野球では、2019年に北海道日本ハムファイターズがショートスターターを導入したことが、従来とは異なる投手運用の代表的な事例として知られています。
また、2020年には新型コロナウイルスの影響による過密日程の中で、読売ジャイアンツや横浜DeNAベイスターズが救援投手を中心とする起用を実践しました。
2020年8月9日の巨人対中日戦では、宮國椋丞投手が先発して2イニングを投げた後、今村信貴投手、鍵谷陽平投手、大江竜聖投手、高梨雄平投手、大竹寛投手、中川皓太投手、田中豊樹投手らが継投しました。
巨人は延長10回までの試合を計8人の救援投手を含む継投で戦い、2失点に抑えています。これは、先発投手に長いイニングを任せない投手運用の具体例です。
当時のFull-Countの報道では、DeNAもブルペンデーに対応する捕手として高城俊人選手を起用したことが紹介されました。ラミレス監督は、救援投手とのバッテリーを組んだ際の防御率を起用理由として説明しています。
さらに、日本野球機構(NPB)の2025年10月8日付の記録員コラムでも、近年のオープナーに似た投手起用について、2番手以降に本来の先発投手を置くのではなく、短いイニングをつなぐブルペンデー型の運用が多く見られると説明されています。
つまり、日本プロ野球でもブルペンデーは特殊な海外戦術にとどまらず、チーム事情に合わせて活用されている投手運用の一つです。
MLBと日本プロ野球の違い両リーグの違いを考える際には、単純な採用回数だけでなく、投手の役割分担やシーズン中の登板管理にも注目する必要があります。
- MLB: 投手の左右の相性や対戦データを細かく分析し、短期決戦でも救援陣を積極的に活用する。
- 日本プロ野球: 先発ローテーションを基本としながら、故障や過密日程、チーム事情に応じて救援中心の継投を組み込む。
ただし、MLBだから必ずブルペンデーが多く、日本プロ野球では少ないと単純化することはできません。チームの戦力や日程、監督の方針によって採用状況は変わります。
【実践的な見方】ブルペンデーでは何回投げる?投手起用の判断基準
試合中継やスポーツニュースで「今日はブルペンデー」と聞いたとき、気になるのが各投手の担当イニングです。
1人のリリーフ投手は何回投げる?ブルペンデーでは、1人あたり1イニング前後を担当する形がイメージしやすいものの、実際には投手によって大きく異なります。
例えば、次のような役割分担が考えられます。
- 最初の投手:1~2イニング
- 中盤の救援投手:1イニング前後
- ロングリリーフ:2~3イニング
- 終盤のセットアッパー:1イニング
- クローザー:最終回
これはあくまで戦術を理解するためのモデルであり、固定されたルールではありません。試合展開によっては、1人の投手が3イニング以上を担当することもあります。
ブルペンデーを採用しやすいチームの条件ブルペンデーが効果を発揮するには、次の条件がそろっていることが望まれます。
第一に、複数の信頼できる救援投手がいること。 投手を交代するたびに能力が大きく低下するようでは、戦術として成立しにくくなります。
第二に、投手の特徴を把握できていること。 左右の相性、球種、球速、制球力などを分析し、誰をどの打者にぶつけるのかを明確にする必要があります。
第三に、翌日以降の投手運用に余裕があること。 当日の勝利を優先して救援投手を使い切ってしまうと、その後の試合に悪影響を及ぼす可能性があります。
逆に、救援投手の故障者が多いチームや、連日接戦が続いているチームでは、ブルペンデーの採用が裏目に出ることもあります。
観戦時に注目したい3つのポイントブルペンデーの試合では、次のポイントを押さえると監督の采配や投手交代の意図が分かりやすくなります。
- 最初の投手の役割:相手の上位打線を抑えるための短い登板なのか、複数イニングを任せる予定なのか。
- 中盤の継投:打順の巡りや左右の相性に合わせて投手が交代しているか。
- 終盤の投手配置:勝負どころで最も信頼できる救援投手を投入できているか。
特に重要なのは、単に投手の交代人数を見るのではなく、交代のタイミングと相手打者の並びを照らし合わせることです。そこにブルペンデーの戦術的な狙いが表れます。
【ブルペンデーとは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ブルペンデーとは簡単にいうと何ですか?
A1:先発投手1人に長いイニングを任せず、複数のリリーフ投手を順番に登板させて9イニングを戦う投手起用法です。試合前から救援投手中心の継投を計画している点が特徴です。
Q2:ブルペンデーとオープナーは同じ意味ですか?
A2:厳密には異なります。オープナーは救援投手が最初の1~2イニングを投げた後、本来の先発投手が長いイニングを担当する方式です。ブルペンデーは、その後も複数の救援投手で試合をつなぐ方式です。ただし、報道では広い意味で混同されることもあります。
Q3:ブルペンデーでは投手は何回投げますか?
A3:決まった回数はありません。1イニング前後を担当する投手が多い形を想定できますが、ロングリリーフとして2~3イニング以上を投げる投手が起用されることもあります。
Q4:ブルペンデーは先発投手を使わないのですか?
A4:従来型の先発投手に長いイニングを任せないという意味です。最初に登板する投手は公式記録上の先発投手になりますが、本職がリリーフの投手であるケースもあります。
Q5:ブルペンデーを採用する最大のメリットは何ですか?
A5:相手打者に同じ投手との対戦を繰り返させず、投手ごとの特徴や左右の相性を生かせることです。また、先発投手の不足や故障にも対応できます。
Q6:日本プロ野球でもブルペンデーは採用されていますか?
A6:はい。2019年の日本ハムによるショートスターターの導入や、2020年の巨人・DeNAなどの救援投手中心の起用が代表的な事例です。NPBの公式記録員コラムでも、近年のブルペンデー型の継投について解説されています。
Q7:ブルペンデーは必ず勝ちやすくなる戦術ですか?
A7:必ずしもそうではありません。救援投手の層が厚く、投手の相性を適切に使い分けられる場合には効果的ですが、救援陣の疲労や翌日の登板への影響が大きくなると、逆効果になる可能性もあります。
ブルペンデーとは、先発投手に長いイニングを任せず、複数の救援投手による継投で試合を組み立てる投手起用法です。
採用する理由には、先発投手の故障や不足への対応だけでなく、打者3巡目の壁を避けることや、左右の相性を生かした投手運用などがあります。
オープナーとの違いは、最初の救援投手が降板した後の投手構成です。オープナーでは本来の先発投手が中盤を担当するのに対し、ブルペンデーでは複数のリリーフ投手が短いイニングをつないでいきます。
2026年のMLBでもポストシーズンを含めて活用例が見られ、日本プロ野球でもチーム事情に応じた継投戦術として認識されています。
【プロの結論】ブルペンデーの本質は、単に先発投手を使わないことではありません。9イニングを通じて、どの投手を、どの打者に、どのタイミングでぶつけるかを最適化することにあります。
試合を観戦する際には、登板した投手の人数だけでなく、交代のタイミング、打順との相性、翌日の投手運用まで注目してみてください。監督が描いた継投の狙いが分かれば、ブルペンデーという戦術の面白さをより深く理解できます。
参考にした主な情報源- MLB公式サイト「Opener」「Third Time Through the Order Penalty」
- MLB公式サイト(2026年9月29日)ホワイトソックスのポストシーズン投手起用に関する報道
- 日本野球機構(NPB)公式サイト「記録員コラム」(2025年10月8日)
- Full-Count(2020年8月11日)巨人・DeNAのブルペンデーに関する報道
- MLB公式サイト「How has a year of the opener changed baseball?」